2020
映像作品
7分27秒



人々の消えた空間では、彼らの声や足音に押しつぶされていた本来の揺らぎや音が表出しつつあるように思う。それら一つ一つの輝きに触れたくて、誰も居ない大学を歩いた。初めて撮影を行ったのは、学生の往来が例年減少する2019年の冬から春にかけてのことだった。
状況は一変し、人々の活動停滞によって非人間的な時間は延長され、その純度は高まっていった。その世界は画像のように無時間的で、空気はゼラチンのように重たく感じられた。
ときたま発せられる何かしらの揺らぎによって時間が発生し、また消えていくようだった。
侵入者であり、不純物である私には瞬きするにも慎重さが求められた。
ある意味では何か自己完結的で独立した空間だったのかもしれない。空間のための空間、とでも言えるだろうか。そこに大きな魅力を感じたし、それらの気づきによって、記録方法も画像から映像へと変わっていった。

2020年写真新世紀 佳作受賞作品
写真新世紀展2020 展示作品

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