2024
サイアノタイププリント、FHDビデオ、サウンド、瓦礫など
洗うこと

解体していくこと

素材ごとに分別していくこと

イメージを重ねて細部を奪っていくこと

日本では古くからモノや場所には霊が乗り移ってしまうので、処分する前に霊と物質を引き離すという考え方・風習があります。この観念を踏まえると、建築の解体前に行う清掃は単に部屋を綺麗にするというよりも、そこに残る霊性を空間や物質から抜き取るという意味で、解体作業に地続きな営みのように思えます。

近代的なプロセスによって解体されるアパートやマンションに対しても、私は同様の眼差しを向け、解体前に清掃や撮影を繰り返し行い、さらに解体後に残された瓦礫やイメージの中においても解体を試みました。

一枚の青写真は、かつて建築の設計図面に用いられたサイアノタイプという技法を用い、清掃後に解体された72部屋を一枚に合成したプリントです。合成作業によって清掃以上に個々の汚れや痕跡を奪われた部屋のイメージは、消失を控えた空間の内的解体図でありながら、当時の建築家が思い描いた完成想像図に等しい姿でもあるでしょう。

また、空間に並べられた瓦礫は、道具や建築、船舶などに対する供養の事例を参考にしながら、それぞれの持っていた役目からの解放を願い、素材や役割ごとに分別を行い配置されています。

本作品に至る数種の解体作業は、日々生成と破壊が繰り返される空間を生きる私にとって、自己の周辺を可能な限り把握し、文字通り“地に足をつけるため”に必要な処方箋のように思えてならないのです。

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